実施校

南九州市立川辺中学校(鹿児島県南九州市)

がんの基礎知識と予防の重要性についての授業を実施しました。

1. 医学生による講義

南九州市立川辺中学校にて、医学生によるがん教育の講義を実施しました。

授業の前半では、医学生から、がんという病気の基礎知識や、日本におけるがんの状況、予防、早期発見、がん検診の大切さについて説明がありました。

はじめに、日本では40歳以降、がんが大きな死亡原因の一つとなっていることが紹介されました。がんになる人は、男性では3人に2人、女性では2人に1人とされており、がんで亡くなる人も男性では4人に1人、女性では6人に1人と説明されました。これらの数字を通して、がんは一部の人だけが関わる病気ではなく、誰にとっても身近な病気であることが伝えられました。

続いて、がんという病気の仕組みについて、人間の体をつくる「細胞」を例に説明がありました。人間の体は多くの細胞からできており、細胞には呼吸、食べ物の消化、体に必要な働きなど、それぞれ役割があります。がんは、もともと健康だった細胞が何らかのダメージを受けて異常な細胞に変わり、その細胞が勝手に増えてしまう病気であることが説明されました。

がん細胞が増えると、体の中で本来必要な働きが妨げられ、体の機能を保つことが難しくなる場合があります。医学生は、がんが単に「怖い病気」というだけではなく、体の中でどのように起こる病気なのかを理解することが、予防や早期発見を考えるうえで大切であると伝えました。

予防に関する内容では、健康な細胞にダメージを与える要因として、喫煙、飲酒、塩分のとりすぎ、感染症などが紹介されました。一方で、健康的な生活をしていてもがんになる場合があることや、体質的にがんになりやすい人もいることにも触れ、がんは誰にでも起こり得る病気であることが説明されました。

また、感染症が関係するがんの例として、HPVと子宮頸がんの関係についても説明がありました。HPVワクチンによって予防できるがんがあることが紹介され、生活習慣だけでなく、正しい医療情報を知り、必要な予防行動をとることの大切さを学びました。

講義の後半では、がん検診について詳しく説明がありました。がんは初期段階では自覚症状が出にくく、自分では気づきにくいことがあります。そのため、がん細胞が大きく増える前に、検診によって早期に見つけることが重要であると伝えられました。

さらに、南九州市など自治体のホームページで「がん検診」と検索すると、検診の対象年齢や費用、受診方法を調べられることも紹介されました。多くのがん検診は40歳以降が対象となりますが、子宮頸がん検診は20歳以降が対象となる場合もあるため、将来自分自身が検診を受ける年齢になったときに、忘れずに受診してほしいというメッセージが伝えられました。

最後に、医学生からは、がんは早く見つけるほど治療につながりやすい病気であること、体にいつもと違う症状がある場合は放置せず病院に行くこと、そして家族にもがん検診の大切さを伝えてほしいという話がありました。

主なポイント

  • 人間の体は多くの細胞からできており、がんは異常な細胞が増える病気であること
  • がん細胞が増えると、体の本来の働きが妨げられる場合があること
  • 喫煙、飲酒、塩分のとりすぎ、感染症などが、がんの原因になる場合があること
  • がんは初期には自覚症状が出にくいため、がん検診による早期発見が大切であること
  • 自分自身だけでなく、家族にもがん検診の重要性を伝えることが大切であること

2. がん経験者による体験談

後半では、がん経験者の藤原さんより、ご自身の経験をもとにしたお話がありました。

藤原さんは、はじめに「がんサバイバー」という言葉を紹介しました。がんサバイバーとは、がんを経験した人や、がんと向き合いながら生活している人を指す言葉であると説明し、これからニュースや新聞などで目にすることがある言葉として、生徒に覚えてほしいと伝えました。

体験談では、藤原さんが乳がんに気づいたきっかけについて話されました。藤原さんには、朝起きて水を飲み、歯を磨き、シャワーを浴びるという日々のルーティンがありました。ある日、シャワー中に体を洗っていた際、いつもとは違う違和感を覚えました。その日の夜、改めて確認すると、しこりのようなものを感じたといいます。

そのタイミングで、自治体から届いていた乳がん検診のクーポンが目に入りました。藤原さんは、それまで「自分は健康だから、がんになるはずがない」と考え、検診案内を開封せずにいたそうです。しかし、体の違和感と検診案内が重なったことをきっかけに、検診を受けることにしました。

検査では、マンモグラフィや細胞を詳しく調べる検査を受け、その後、乳がんと診断されました。診断結果が出るまでの間、藤原さんはインターネットで情報を調べたそうです。その中には医学的に不確かな情報も多くあった一方で、医師の記事やがん経験者の体験談を参考にし、自分が乳がんだった場合にどのような治療を受けるのかを少しずつ理解していったと話されました。

治療については、しこりが1.5センチほどで比較的小さい段階だったため、乳房の一部を残す手術を受けたことが紹介されました。その後、放射線治療を25回受け、さらに乳がんに関係する女性ホルモンを抑える薬を10年間飲む治療を続けていることも話されました。手術後も3か月に1回の通院や、血液検査、超音波検査、触診、マンモグラフィなどによる経過観察を続けていたそうです。

一方で、治療後4年目の検査で再発がわかった時期がありました。その際には大きく落ち込み、家に引きこもるほどつらい時間を過ごしたことも語られました。しかし、自分にはまだやりたいことや、会いたい人、行きたい場所があると気づいたことで、再び前を向くことができたと話されました。

藤原さんは、がんを経験して「時間は有限であり、命にも限りがある」と感じたことを生徒に伝えました。そのうえで、やりたいことをやる、行きたいところに行く、会いたい人に会うということを大切にしていると話されました。

また、がんを経験したことをきっかけに、ヘアドネーションやシングルマザー支援、がん患者さんに希望を届けるための発信などにも取り組むようになったことが紹介されました。病気を経験しても明るく希望を持って生きられること、そして自分の経験を誰かのために役立てることができるというメッセージが伝えられました。

最後に藤原さんは、がんは早期に発見できれば治療につながる可能性が高まる一方、自覚症状がないまま進行することがあるため、定期的ながん検診がとても大切であると強調しました。生徒に対しては、家に帰ったら家族に「最近、がん検診に行っている?」と聞いてほしいと呼びかけました。

主なポイント

  • 日々のルーティンがあったことで、体の小さな違和感に気づくことができたこと
  • 自治体から届いた乳がん検診のクーポンをきっかけに、検診を受けたこと
  • インターネット上には不確かな情報もあるため、信頼できる情報を選ぶことが大切であること
  • がんを経験して、時間や命には限りがあると実感したこと
  • 家族や身近な人に、がん検診の大切さを伝えてほしいというメッセージ

3. 生徒の反応・学び

授業中、生徒たちは医学生による説明や藤原さんの体験談に真剣に耳を傾けていました。がんの仕組みや、がんが身近な病気であること、がん検診による早期発見の大切さについて、具体的な事例を通して理解を深める時間となりました。

質疑応答では、生徒から「水分をあまり取らないことは、がんに関係するのか」「がんは人間だけがなる病気なのか」「がんのステージはどのように考えればよいのか」「がんは体のどの場所にできるのか」といった質問が出ました。

これに対し、医学生からは、水分不足はがんの主要な原因として説明されるものではないものの、脱水や血液の巡りなど体への影響があるため、健康のために水分をとることは大切であることが説明されました。また、がんは細胞の病気であり、体のさまざまな場所にできる可能性があること、種類も分類の仕方によって多く存在することが伝えられました。

がんのステージについては、がんの広がり方や深さ、転移の有無などによって判断されることが説明されました。生徒たちは、がんという言葉を一つでとらえるのではなく、種類や進み方、治療の考え方がそれぞれ異なることを学びました。

また、藤原さんに対しては、再発後に落ち込んだ状態からどのように立ち直ることができたのかという質問がありました。藤原さんは、シングルマザー支援や子ども食堂など、自分がやりたいことを思い出したことが前を向く力になったと話されました。そして、生徒たちにも、叶うかどうかに関わらず、やりたいことや夢をたくさん持っていてほしいと伝えました。

今回の授業を通して、生徒たちは、がんを自分や家族にも関係する身近な病気として考えるとともに、健康を守る生活習慣、検診の重要性、体の違和感に気づくこと、そして病気を経験した人への理解や寄り添いについて学びました。

また、藤原さんの体験談から、病気を経験しても希望を持って生きることができること、限りある時間を大切にすること、自分の経験を誰かのために生かすことの大切さにも触れる機会となりました。

実施校
南九州市立川辺中学校(鹿児島県南九州市)
参加学生
国際医療福祉大学 4年、がん経験者
実施日
2026/7/9
対象
中学3年生

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