
1. 医学生による講義

鹿児島市立荒田小学校にて、6年生を対象に、医学生によるがん教育の講義を実施しました。
講義では、まず生徒への事前アンケートの結果を紹介しながら、がんについて「名前は知っている」「少し知っている」という生徒が多い一方で、具体的にどのような病気なのかを説明することは難しいことに触れました。そのうえで、がんを正しく知ることをテーマに、がんの基礎知識や予防、早期発見の大切さについて学びました。
はじめに、日本におけるがんの状況について説明がありました。がんは年齢を重ねるにつれて身近になる病気であり、男性では3人に2人、女性では2人に1人が生涯のうちにがんになるとされていることが紹介されました。また、がんで亡くなる人の割合についても触れられ、がんは決して珍しい病気ではなく、誰にとっても関わりのある病気であることが伝えられました。
続いて、がんという病気の仕組みについて、人間の体をつくる「細胞」を例に説明がありました。体は多くの細胞からできており、それぞれの細胞には、呼吸をする、食べ物から栄養を吸収する、体を動かすなどの役割があります。がんは、もともと健康だった細胞が何らかのダメージを受け、異常な細胞に変化し、勝手に増えてしまう病気であることが説明されました。
また、がんはインフルエンザや風邪のように人から人へうつる病気ではないことも伝えられました。がん患者さんに触れたり、近くにいたりすることでがんがうつることはないため、正しい知識を持つことの大切さについても学びました。
予防に関する内容では、細胞にダメージを与える要因として、喫煙、飲酒、塩分のとりすぎ、感染症などが紹介されました。児童に対しては、現在できることとして、たばこを吸わないこと、将来お酒を飲む場合にも量に気をつけること、塩分のとりすぎに注意することなど、健康的な生活習慣の大切さが伝えられました。
さらに、感染症が関係するがんを予防する方法として、HPVワクチンについても触れられました。ワクチンで予防できるがんがあることを知ることで、がん予防には生活習慣だけでなく、正しい医療情報を知ることも重要であることを学びました。
最後に、がん検診と早期発見の重要性について説明がありました。がんは初期の段階では自覚症状が出にくいことが多く、気づいた時には進行している場合もあります。そのため、定期的にがん検診を受け、早い段階で見つけることが大切であると伝えられました。児童自身がすぐに検診を受ける年齢ではないものの、家に帰ったら家族に「がん検診を受けているか」を聞いてみてほしいというメッセージが送られました。
主なポイント
- がんは日本人にとって身近な病気であり、誰でもなる可能性があること
- がんは風邪やインフルエンザのように人から人へうつる病気ではないこと
- 健康的な生活をしていても、体質や原因不明でがんになることがあること
- HPVワクチンなど、ワクチンで予防できるがんもあること
- がんは初期には自覚症状が出にくいため、早期発見が大切であること
2. がん経験者による体験談

後半では、がん経験者の藤原さんより、ご自身の体験をもとにしたお話がありました。
藤原さんは、がん患者さんやがんを経験した人を表す言葉として「がんサバイバー」という言葉を紹介しました。新聞やテレビなどでも使われる言葉であり、がんを経験しながら生活している人がいることを知るきっかけとなりました。
体験談では、藤原さんが乳がんに気づいた経緯についてお話がありました。藤原さんは、朝起きて水を飲み、歯を磨き、シャワーを浴びるという日々のルーティンの中で、体にいつもと違う違和感を覚えました。その後、自治体から届いていた乳がん検診の案内を目にし、検診を受けることにしたと話されました。
検査ではマンモグラフィや細胞を詳しく調べる検査を受け、その後、乳がんと診断されました。診断結果が出るまでの間、インターネットで情報を調べた際には、医学的に不確かな情報も多く見つかった一方で、医師が書いた記事やがん経験者の体験談などを参考にすることで、治療の流れを少しずつ理解していったと話されました。
治療については、しこりが比較的小さい段階で見つかったため、乳房の一部を残す手術を受けたこと、さらに放射線治療やホルモン治療を行ったことが紹介されました。また、手術後も定期的に通院し、血液検査、超音波検査、触診、マンモグラフィなどで経過観察を続けていたことも話されました。
一方で、治療後も再発がわかった時期があり、その際には大きく落ち込み、外に出ることも難しいほど気持ちが沈んだことも語られました。しかし、自分にはまだやりたいことがあると気づいたことが、再び前を向くきっかけになったと話されました。
藤原さんは、がんを経験して「時間は有限であり、命も有限である」と感じたことを生徒に伝えました。そのうえで、やりたいことをやる、会いたい人に会う、行きたいところに行くという3つのことを大切にしていると話されました。
また、がんを経験したことをきっかけに、ヘアドネーションやシングルマザー支援、がん患者さんに希望を届けるための発信など、新たな活動にも取り組むようになったことが紹介されました。病気を経験しても、前向きに生きることができること、そして周囲にできることを考え続ける大切さが伝えられました。
最後に藤原さんは、がんは早期に発見できれば治療の可能性が高まる病気である一方、自覚症状がないまま進行することがあるため、定期的な検診が大切であると強調しました。児童には、家に帰ったら家族に「最近、がん検診を受けている?」と聞いてほしいと呼びかけました。
主なポイント
- 日々のルーティンの中で、体の小さな違和感に気づいたこと
- 治療後も定期的な経過観察を続けることが大切であること
- 自治体から届いた乳がん検診の案内をきっかけに検診を受けたこと
- がんを経験して、時間や命には限りがあると実感したこと
- 家族や身近な人に、がん検診の大切さを伝えてほしいというメッセージ
3. 生徒の反応・学び
授業中、生徒たちは医学生による説明や藤原さんの体験談に真剣に耳を傾けていました。がんについて「怖い病気」「命に関わる病気」というイメージを持っていた生徒も、授業を通して、がんは正しく知り、早く見つけ、治療につなげることが大切な病気であることを学びました。
質疑応答では、生徒から「がんにはどのような種類があるのか」「自分たちの年齢でもがんになることはあるのか」といった質問が出ました。これに対して、がんには肺がん、胃がん、大腸がん、肝臓がん、すい臓がんなど多くの種類があることや、子どもでもがんになる可能性はあるものの、大人に多いがんとは性質が異なる場合があることが説明されました。
また、藤原さんに対しては、再発後に落ち込んだ状態からどのように前を向くことができたのかという質問もありました。藤原さんは、やりたいことがたくさんあることに気づいたことが、生きる力になったと話されました。このやりとりを通して、生徒たちは病気そのものだけでなく、病気と向き合う人の気持ちや、その人を支える考え方についても学ぶ機会となりました。
授業後には、生徒から「がんについて知っているつもりだったけれど、詳しく知ることができた」「がん検診の大切さがわかった」「時間を無駄にせず、やりたいことを大切にしたい」といった感想がありました。がんを自分や家族に関わる身近な問題として考えるきっかけとなり、健康や命、家族との関わりについて考える時間となりました。
先生からも、医学生によるがんの仕組みや予防に関する説明は短い時間の中でわかりやすく整理されていたこと、藤原さんの実体験には大きな説得力があったことが伝えられました。また、学んだことを自分だけで終わらせず、家族や周囲の人にも伝えていくことの大切さについても共有されました。
今回の授業は、がんに関する正しい知識を学ぶだけでなく、健康を守る行動、家族への声かけ、命や時間を大切にすることについて考える貴重な機会となりました。
- 実施校
- 鹿児島市立荒田小学校(鹿児島県鹿児島市)
- 参加学生
- 国際医療福祉大学 4年、がん経験者
- 実施日
- 2026/7/9
- 対象
- 小学6年生