
1. 医学生による講義

医学生は、がんの基礎知識について、細胞や遺伝子の働きから丁寧に説明しながら講義を行いました。冒頭では、自身の紹介や、現在医師になるために学んでいることを紹介し、生徒が親しみを持って話を聞ける雰囲気づくりがなされていました。
講義では、がんとは「体の中で異常な細胞が勝手に増え、広がっていく病気」であることが説明されました。体は細胞からできており、その細胞が分裂を繰り返す中で遺伝子に傷が入ることがあること、通常は免疫の働きによって異常な細胞は排除されるものの、一部が免疫をすり抜けて増え続けることで、がんになることが解説されました。
また、がん細胞は周囲から栄養を奪いながら大きくなり、血管やリンパ管を通じて別の臓器へ広がることがあることも説明されました。こうした広がりによって、体重減少、痛み、便秘、むくみなど、さまざまな症状が出ることが紹介され、生徒たちはがんが体全体に影響する病気であることを学びました。
さらに、がんには多くの種類があり、それぞれできやすい場所や治療法が異なることについても、ポケモンの種類や特徴にたとえて分かりやすく説明されました。がんは一つの病気ではなく、多様な性質を持つものだという理解につながる内容でした。
予防については、感染症と喫煙が大きな要因として挙げられ、特に喫煙はほぼ全身のがんのリスクを高めることが強調されました。また、HPV(ヒトパピローマウイルス)による子宮頸がんなどについても触れられ、ワクチン接種によって防げるがんがあることが紹介されました。品川区では男子もHPVワクチンの対象となっていることが説明され、生徒自身が調べたり相談したりすることの重要性が伝えられました。
加えて、がんはゆっくり育つことが多いため、早期の段階で見つけることが重要であり、そのためにがん検診があることも説明されました。特に、保護者世代が検診の対象年齢にあたることから、家庭で「がん検診を受けているか」と一声かけてほしいという呼びかけがありました。
最後に、がんは身近な病気であること、がん患者は街の中で普通に生活していること、患者に対しては言葉を選ぶよりもまず話を聞くことが大切ではないかという考えが伝えられました。生徒に対しては、自分自身を守ることと、周囲の人を守る一言の大切さが強調されました。
主なポイント
- がんは、異常な細胞が体の中で増え続け、広がる病気である。
- 体には異常な細胞を排除する仕組みがあるが、それをすり抜けるとがんになることがある。
- がんは体のあらゆる場所にでき、多くの種類がある。
- 喫煙や感染症は、がんの大きな要因である。
- HPVワクチンにより、防げるがんがある。
- がんは早期発見が大切であり、検診が重要である。
- 家族に検診を勧めるなど、一声かけることも大切である。
2. がん経験者による体験談

自身と家族の経験をもとに、がんが本人だけでなく家族の生活にも大きな影響を与えることについて語りました。講演では、がんの診断を受けたときの驚きや不安に加え、その後の治療や日常生活の変化、家族の受け止め方についても触れられました。
また、がんになると治療そのものだけでなく、仕事や学校生活、人間関係、気持ちの整理など、生活のさまざまな場面に影響が及ぶことが説明されました。特に、本人だけでなく家族も不安や戸惑いを抱えることがあり、周囲の理解や支えが重要であることが伝えられました。
さらに、病気を経験する中で、気持ちを言葉にすることの難しさや、孤立しないために支え合える相手の存在が大切であることも語られました。一方で、困難な状況の中でも、少しずつ前を向いていく力や、日々の生活の中に支えを見いだしていくことの大切さについても話がありました。
加えて、インターネットなどにはさまざまな情報がある一方で、正しい情報を選ぶことの重要性についても触れられました。生徒に対しては、困ったときや不安なときには一人で抱え込まず、周囲の大人や信頼できる人に相談してほしいこと、そして誰かがつらい状況にあるときには、その人の気持ちに寄り添う姿勢を持ってほしいというメッセージが伝えられました。
最後に、どのような状況でも人には前を向く力があり、周囲と支え合いながら歩んでいくことができるという、前向きなメッセージで講演は締めくくられました。
主なポイント
- がんは本人だけでなく、家族の生活にも大きく影響する。
- 健康に気をつけていても、がんになることはある。
- 治療のつらさだけでなく、仕事や学校生活、人間関係などの問題も重なることがある。
- 子どもたちも不安や孤独を抱えやすく、支えが必要である。
- ネットの情報をうのみにせず、信頼できる情報を得ることが大切である。
- つらい状況でも、人は時間をかけて前を向いていく力を持っている。
3. 生徒の反応・学び
授業では、生徒たちは医学生による講義とがん経験者による体験談の両方に真剣に耳を傾けていました。がんについては、体の中で何が起きるのか、どのように予防できるのかといった知識を学ぶだけでなく、がんが本人だけでなく家族にも影響を与えることを具体的に理解する機会となっていました。
質疑応答では、医学生ががんに興味を持ったきっかけや、がんになったときの生活の変化などについて質問が出され、生徒たちは病気そのものだけでなく、医療や人との関わり方にも関心を持っている様子がうかがえました。また、患者に対してどのように接すればよいかという問いに対して、「まず話を聞くことが大切」という考えが共有されたことは、生徒にとって特に印象に残ったと考えられます。
授業全体を通して、生徒たちはがんを自分たちには関係のない病気ではなく、将来や家族にも関わる身近な問題として捉え直すことができたと考えられます。また、予防や検診の大切さだけでなく、困難に直面したときに支え合うことや、自分の中にある力を信じることの重要性についても学ぶことができた、意義深い学びの場となりました。
- 実施校
- 品川区立冨士見台中学校(東京都品川区)
- 参加学生
- 日本大学5年、がん経験者
- 実施日
- 2026/3/4
- 対象
- 中学2年